富戸ケアファーム

農を通じて、多世代が交わる場所

富戸ケアファームは、農業を通じて共生社会の構築を目指す農福連携プロジェクトです。

地域の様々な団体や個人等と連携し、多様な世代、背景を持つ人々が「農」を通じて楽しく集える、繋がれる空間づくりを目指しています。

2023年度より、伊東市の介護予防事業「認知症ケアを目的とした介護予防型農的活動事業」を当法人が受託し、スタートしました。

伊東市介護予防事業

 

認知症の診断後支援・早期支援をテーマに、伊東市の介護予防事業を受託しています。

 

<認知症の診断後支援・早期支援とは?>

認知症と診断を受けた方に対し、本人や家族の不安や孤立感を軽減し、生活の質(QOL)を高めることを目的としています。

認知症に対する理解を深めたり、専門家への相談、仲間づくりができる場所へ繋がることなど、様々な支援が考えられています。

認知症と診断される人が年々増加する中、診断後支援の必要性は日本だけでなく世界的に叫ばれていますが、まだまだ整備は途上です。「認知症」というと、介護保険サービスをイメージされるかもしれませんが、支援の形は、介護保険の利用だけを指すものではありません。

 

 

<なぜ診断後支援・早期支援か?>

認知症は、本人や家族に大きな影響を及ぼす病気であり、早期から適切な支援を行うことが重要です。しかし、研究によると診断から介護保険サービス利用までの「空白期間」が平均16.93ヶ月も続くとされています(①)。この期間が長引くほど、精神的・身体的・経済的な負担が増大することが明らかになっており、早期支援の必要性は極めて高いといえます。

まず、診断後支援の遅れが認知症の進行を早める要因となっています。たとえば、診断を受けた方のうち、約3分の2が1年以内に介護保険サービスに繋がるものの、6分の1は3年以上かかるというデータがあります(①)。この遅れが、日常生活動作(ADL)の低下を加速させ、在宅生活の継続を困難にします。反対に、早期にリハビリや認知機能訓練を導入することで、認知症の進行を遅らせ、生活の質を向上させることが期待されます。

また、空白期間が長くなるほど、家族への負担も増大します。診断から支援に至るまでの期間に、家族が一人でケアを抱え込むケースが多く、その間に精神的な孤立感や身体的な疲労が蓄積します。早期に支援につながれば、家族が適切なサポートを受けられる環境を整えることができ、結果的に家族の負担軽減とケアの質向上につながります。

さらに、空白期間が短縮されることで、本人が前向きに将来を考える機会を得ることができます。認知症と診断された方が、自分自身の将来を計画し、社会とつながり続けるためには、診断後すぐに支援の手を差し伸べることが不可欠です。社会との接点が途切れることなく維持されることで、認知症の進行が遅れるだけでなく、本人の生きがいにもつながります。

このように、平均16.93ヶ月とされる空白期間の短縮は、本人や家族だけでなく社会全体にとっても大きな意義を持ちます。課題に正面から向き合い、診断後支援の体制を整えることで、認知症予防とケアの質の向上を実現することができるでしょう。

 

引用:(①)認知症介護研究・研修仙台センター 「認知症の家族等介護支援に関する調査研究事業報告書」 2018

 

 

<本事業の対象者>

医療機関で診断を受けた方以外にも、認知症が疑われたり、生活上の困りごとが発生しているケースは沢山あります。伊東市では、そうした方々も早期に支援に繋げられるよう、診断を受けた方以外も事業の対象者として、活動に参加できるようになっています。

 

 

<本事業のゴール>

本事業が目指しているのは、「認知症フレンドリーな地域」づくり

どのような要素が必要かについては、諸説あります。当法人では下記に挙げられる6つの要素のうち、1〜5の5つについて、富戸ケアファームを通じてアプローチしていきます。

 

 

<事業体制>

本事業は、委託先である伊東市(行政)はもとより、活動場所である農地を管理する農家、認知症疾患医療センター、地域包括支援センターと連携し、運営しています。また、東京都健康長寿医療センターとも連携し、介入効果に関する検証もしているところが特徴的です。

 

<参加について>

富戸ケアファームで実施している伊東市介護予防事業への参加手続きは、認知症疾患医療センターや、地域包括支援センターでの相談を通じて行われます。相談を受けたセンターから、当法人へ情報が提供され、その後当法人から参加希望者へご連絡させて頂く流れとなります。下記チラシもご参照ください。

ダウンロード
R6富戸ケアファーム チラシ A4.pdf
PDFファイル 811.9 KB

今後の展望について

<認知症フレンドリーな地域づくり>

「認知症フレンドリーな地域」、すなわち共生社会は、高齢者だけに注目して実現できるものではありません。子どもから高齢者まで、多様な背景や世代を持つ人々が関わり合うことで、「認知症」を含む人間のさまざまな特性を受け入れる、本当の意味での共生社会が築けるのではないでしょうか。

また、自然の中での活動や畑での共同作業には、世代を超えたつながりを生む力があります。このプロジェクトを通じて、地域の方々が緩やかにつながり、人間関係が豊かになることで、生活や社会そのものもより豊かになると考えています。

 

 

 

<食物を生産する農業の視点から>

農福連携事業としてスタートした富戸ケアファームですが、つくった野菜が無駄にならないよう、そして適切に地域で消費して頂けるような生産体制や流通を今後構築していきたいと考えています。今後は少しずつ、無理なく投資していき、生産量や品目を拡大していきたいと考えています。福祉施設等での給食使用のほか、地域への販路も構築し、持続的な農業生産を目指していきます。

 

<次世代を育成する場として>

伊豆は豊かな自然が多く、魅力あふれる地域です。農園は、自然体験や収穫体験を通じて、次世代を担う子どもたちが地域の大人とともに様々経験が積める場所になり得ます。高齢者や、子育て世代を交えたイベントで3世代交流を実施したり、今後当法人が実施していく不登校支援においても、価値を発揮してくれることでしょう。